「クラウドは安心」って本当? “お任せ”に潜む大きな落とし穴と、今すぐできるリスク対策
こんにちは!AI技術解説ブロガーのジョンです。
最近、多くの企業が「クラウド」という言葉を口にするようになりましたね。「データをクラウドに保存する」「システムをクラウド化する」など、なんだか便利で安心なイメージがありませんか?
でも、もし「クラウドに預けておけば、あとは全部やってくれる」と思っているとしたら、少し注意が必要です。実はそこには、見過ごされがちな大きな落とし穴があるんです。
今日は、そんなクラウドの「リスク」について、初心者の方にも分かりやすく、そして“怖がらせる”ためではなく“賢く使う”ために、一緒に考えていきたいと思います。
あるイベントでの気まずい出来事
先日、ある大手クラウド会社が主催するイベントに登壇する機会がありました。僕のテーマは「クラウドの可能性と、そのリスク管理の重要性」。しかし、イベント直前になって主催者からメールが届きました。
「ジョンのスライドのうち、クラウドの障害やプロバイダーへの過度な依存リスクに触れた3枚を削除してください」
彼らの「うちは常に安定しています」というメッセージに合わなかったようです。少しがっかりしましたが、スライドを修正して登壇しました。そして、実際のプレゼンでは、口頭で「万が一の障害に備えることの重要性」を強調しました。会場の反応は様々で、深く頷く人もいれば、後ろにいた主催者たちは明らかに不快そうな顔をしていました。案の定、それ以来そのイベントには呼ばれていません(笑)。
でも、これが現実なんです。クラウドのリスク管理は、サービスを疑うことではありません。予期せぬ事態が起きたときに、自分たちのビジネスを守るための「保険」のようなものなのです。
クラウドの「責任共有モデル」という考え方
まず知っておきたいのが、クラウドにおける「責任共有モデル」という考え方です。
これは、「クラウドに関する責任は、サービスを提供する会社と、それを利用する私たちユーザー企業とで分担しましょうね」というルールです。
例えば、賃貸マンションを想像してみてください。
- 大家さん(クラウド会社)の責任:建物が地震で倒れないようにする、水道や電気がちゃんと使えるようにするなど、建物そのもの(インフラ)の安全を保つこと。
- 住人(私たちユーザー)の責任:部屋にどんな家具を置くか、鍵をちゃんとかけるか、火の元に気をつけるかなど、部屋の中(データやアプリ)の管理と安全。
クラウドもこれと同じです。クラウド会社は、データセンターの安定稼働や物理的なセキュリティは保証してくれます。しかし、その上で動かすアプリや、保存する大切なデータ、誰がそのデータにアクセスできるかといった管理は、すべて私たちユーザー側の責任なのです。「クラウドに預けたから100%安全」ではない、ということをまず覚えておきましょう。
他人事じゃない!実際に起きた大手クラウドの障害
「でも、AmazonやGoogleみたいな大企業なら大丈夫でしょ?」と思うかもしれません。しかし、残念ながら、どんな巨大企業でもシステム障害は起こり得ます。実際に、過去にはこんな事例がありました。
- AWS(Amazon)の障害(2021年12月):世界最大手のクラウドサービスで大規模な障害が発生。ECサイトや物流企業が大きな影響を受け、クリスマス商戦の真っ只中で配送がストップするなどの事態になりました。
- Azure(Microsoft)の障害(2022年):金融サービスや大企業のシステムが影響を受け、世界中で業務に支障が出ました。特定の会社に依存しすぎることのリスクが浮き彫りになりました。
- Google Cloudの障害(2020年):GmailやYouTubeといった身近なサービスが停止。この基盤上で動いていた他の多くの企業のサービスも利用できなくなり、売上の損失につながりました。
これらの事例から分かるように、クラウド会社も完璧ではないのです。そして、その影響は私たちのビジネスに直接及んできます。
もしクラウドが止まったら…? 影響はドミノ倒しのように広がる
もし、あなたの会社が使っているクラウドサービスが止まってしまったら、どんなことが起きるでしょうか?その影響は、一つだけにとどまりません。
- 業務の停止:社内のシステムが使えなくなり、仕事が完全にストップしてしまう可能性があります。特に、金融や医療など、一瞬の停止が大きな問題につながる業界では深刻です。
- 金銭的な損失:サービスが提供できない間の売上損失はもちろん、復旧にかかる費用や、場合によっては賠償金が発生することもあります。
- 信用の失墜:顧客から見れば、原因がクラウド会社にあっても「あの会社のサービスはよく止まる」という印象を持たれてしまいます。一度失った信用を取り戻すのは大変です。
- 1社依存のリスク:もしすべてのシステムを1社のクラウドに頼っていると、その会社がダウンした瞬間に、あなたの会社の業務も完全に麻痺してしまいます。
じゃあ、どうすればいいの?今すぐできるリスク対策6選
ここまで読むと少し不安になってしまったかもしれませんが、大丈夫です。きちんと対策をすれば、クラウドは非常に強力な味方になります。ここでは、企業が取り組むべき基本的なリスク対策を6つご紹介します。
- クラウド会社をしっかり調べる:契約する前に、その会社がどんな災害対策やセキュリティ対策をしているのか、過去の障害履歴などをしっかり確認しましょう。
- 複数のクラウドを使い分ける(マルチクラウド):卵を一つのカゴに盛らないように、AmazonとGoogleなど、複数の会社のクラウドサービスを組み合わせて利用する方法です。これにより、1社で障害が起きても、もう一方で業務を継続できます。
- 「もしも」の計画を立てておく:クラウド障害が起きたときに、「誰が」「何を」「どのように」対応するのか、具体的な行動計画(インシデント・レスポンス・プラン)をあらかじめ作っておきましょう。
- 常に状態を監視する:自分たちのシステムがクラウド上で正常に動いているか、常にチェックする仕組みを導入しましょう。問題の早期発見につながります。
- 契約内容をしっかり確認する:契約書には、障害発生時の補償や復旧目標などが書かれています。不利な内容になっていないか、専門家も交えてしっかり確認することが重要です。
- データのバックアップを取る:最も重要な対策の一つです。大切なデータは、利用しているクラウドサービスとは別の場所(例えば、別の会社のクラウドや自社のサーバーなど)にも定期的にコピー(バックアップ)しておきましょう。
筆者の一言
クラウドは、まるで高性能な最新の自動車のようなものです。正しく使えば、ビジネスをどこへでも速く、効率的に運んでくれます。でも、そのためには運転の仕方を知り、万が一タイヤがパンクした時の備えをしておく必要がありますよね。クラウドのリスク管理も同じで、これは心配性だからやるのではなく、そのパワーを最大限に、そして安全に引き出すための賢い準備なのです。
この記事は、以下の元記事をもとに筆者の視点でまとめたものです:
Risk management in the public cloud is your job