クラウドの世界に新しい波？「代替クラウド」って何だろう？
こんにちは、AI技術解説ブロガーのジョンです。最近、ある大きなクラウド関連のイベントに参加して、「クラウドの世界もどんどん進化しているんだな」と改めて感じました。今日は、その中でも特に注目されている「代替クラウド（Alternative Cloud）」という新しい動きについて、初心者の方にも分かりやすく解説していきたいと思います！
「クラウド」といえば、これまでは大手3社が中心でした
皆さんが「クラウド」と聞いて思い浮かべるのは、Amazonの「AWS」、Microsoftの「Azure」、Googleの「Google Cloud」といった名前ではないでしょうか。これらは「ビッグ・スリー」とも呼ばれ、長年にわたってクラウド市場の中心にいました。あまりにも有名なので、「クラウドを使う＝この3社のどれかを使う」というのが、多くの人にとっての常識だったかもしれません。
しかし、その常識が今、少しずつ変わり始めています。ビッグ・スリー以外の、新しい選択肢である「代替クラウド」が、じわじわと人気を集めているんです。
「代替クラウド」の正体とは？ 具体的な種類を見てみよう！
「代替クラウド」とは、その名の通り、大手3社に代わるさまざまなクラウドサービスのことです。「ワンサイズ・フィッツ・オール（one size fits all）」つまり「一つのサービスですべてをまかなう」という考え方から離れ、もっと専門的で、特定の目的に特化しているのが特徴です。具体的には、以下のような種類があります。
- プライベートクラウド (Private Cloud)
特定の企業だけが使う、いわば「専用のクラウド」です。他の誰とも共有しないため、セキュリティが重要なデータを扱ったり、コストを予測しやすくしたりしたい場合に選ばれます。「すべてのデータは、いずれパブリッククラウド（みんなで共有するクラウド）に移行する」と言われた時代もありましたが、最近では専用環境の価値が見直されています。 - ソブリンクラウド (Sovereign Cloud)
「ソブリン（Sovereign）」とは「主権を持つ」という意味で、これは「データが置かれている国の法律やルールをしっかり守りますよ」ということを保証するクラウドです。例えば、ヨーロッパの企業がヨーロッパの法律に準拠したクラウドを使いたい、といったニーズに応えます。ヨーロッパのスーパーマーケット「Lidl」が独自のクラウドサービスを立ち上げたのは、この代表例です。国境を越えてビジネスをするのが当たり前になった今、データの置き場所（データレジデンシー）や国の規制はとても重要になってきており、政府や大企業から注目されています。 - 特化型クラウド (Specialized Cloud)
ある特定の作業にものすごく強い「専門家」のようなクラウドです。例えば、「CoreWeave」という会社は、最近話題の生成AI（文章や画像を作り出すAI）の開発に欠かせない「GPU（画像処理が得意な高性能なコンピューター部品）」を大量に揃え、AI開発に最適化されたクラウドを提供しています。大手クラウドでは価格が高かったり、提供が遅れたりすることがある専門的な環境を、手頃な価格で提供することで、AI研究者などから絶大な支持を得ています。今後、金融や医療、ゲームなど、さまざまな専門分野に特化したクラウドが増えていくと予想されています。 - マネージドサービス・コロケーション
これらは、複数の異なるクラウドを組み合わせて使う「ハイブリッドクラウド」や「マルチクラウド」を支える縁の下の力持ちです。マネージドサービスプロバイダーは、複雑なクラウド環境の設計や運用を専門家として手伝ってくれます。一方、コロケーションは、企業が自社の機器をデータセンターに置くためのスペースを貸し出すサービスで、物理的なサーバーとクラウドを柔軟に組み合わせたい場合に役立ちます。
なぜ今、「代替クラウド」が選ばれているの？
では、なぜ企業はわざわざ大手以外のクラウドを選ぶのでしょうか。その理由はいくつかあります。
- コストの最適化：大手のクラウドは便利ですが、データの転送料金（Egress Fee）など、使っているうちに予想外のコストがかさむことがあります。代替クラウドは、特定の目的に対してより効率的で、コストを抑えられる場合があります。
- 柔軟性と専門性：「この作業には、この専門クラウドが一番速い」「このデータは、国内のクラウドに置かなければならない」といった、企業の細かいニーズにピッタリ合うサービスを選べるようになります。
- リスク分散：一つの会社にすべてのデータを預けるのではなく、複数のサービスに分散させることで、障害発生時などのリスクを減らすことができます。
つまり、企業は「一番良いクラウド」を探すのではなく、「それぞれの仕事にとって、一番適したクラウド」をポートフォリオのように組み合わせて使うようになってきているのです。
これからの課題と未来
もちろん、いいことばかりではありません。代替クラウドの普及には、いくつかの課題も伴います。
複雑さという壁
たくさんの種類のクラウドを使い分けるのは、とても複雑です。サービスごとに料金体系や使い方、セキュリティの考え方が違うため、管理が大変になります。これを使いこなすには、AWSやAzureだけでなく、さまざまなクラウドに詳しい専門的な知識を持った技術者が必要になります。
大手による買収の可能性
新しくて魅力的な代替クラウドの会社が成功すると、今度は大手企業から「買収」のターゲットにされる可能性があります。大きな会社の一部になることで安定はしますが、そのサービスがもっていた独自の良さが失われてしまうかもしれません。
まとめ：自分に合ったクラウドを選ぶ時代へ
クラウドの世界は、大手3社が独占する時代から、多種多様な代替クラウドが共存する、より豊かで複雑な時代へと移り変わっています。選択肢が増えることは、私たちユーザーにとって大きなメリットです。しかし同時に、それぞれのサービスの特徴をしっかり理解し、自分の目的に合ったものを賢く選ぶ「戦略」がこれまで以上に重要になってきます。
これまでは「どのクラウドを使おうか？」という選択でしたが、これからは「どの作業に、どのクラウドを組み合わせようか？」と考えるのが当たり前になるのかもしれませんね。技術の進化は、私たちに新しい道具と、それを使いこなすための新しい知恵を求めているようです。
この記事は、以下の元記事をもとに筆者の視点でまとめたものです：
Alternative clouds are on the rise