ヨーロッパのクラウド戦略、ちょっぴり悩ましいお話 ～AI時代のデータはどこに置くのが安心？～
みなさん、こんにちは！AIやテクノロジーの難しい話を、できるだけ分かりやすくお届けするジョンです。
今日は、私たちの生活に欠かせなくなってきた「クラウド」という技術と、それに関するヨーロッパのちょっと複雑な悩みについてお話ししようと思います。「クラウドって何？」という方も大丈夫！一緒に見ていきましょう。
まず、クラウドって聞いたことありますか？ 簡単に言うと、インターネットを通じてデータやソフトウェアを利用する仕組みのことです。例えば、スマホで撮った写真をインターネット上に保存したり、パソコンにソフトを入れなくてもメールや書類作成ができたりするのも、クラウド技術のおかげなんですよ。
ヨーロッパが抱える「クラウドの悩み」って？
さて、そんな便利なクラウドですが、最近ヨーロッパでは大きな課題に直面しています。それは、「自分たちのデータやデジタル技術は、自分たちでしっかり管理したい！」という強い思いと、「でも、やっぱり最新の便利なクラウド技術も使いたい！」という現実との間で、ちょっと板挟みになっているんです。
「自分たちで管理したい」という思いは、「デジタル主権」なんて呼ばれたりします。自分たちの国の情報は、自分たちでコントロールしたい、ということですね。これはとても大切な考え方です。
一方で、クラウド技術の世界では、今のところアメリカの大きな会社（アマゾン ウェブ サービス(AWS)やマイクロソフトAzure、グーグルクラウド(GCP)など、聞いたことあるかもしれませんね）が、とっても進んだサービスを提供しています。AIを使った高度な分析ツールや、効率的にシステムを動かす仕組みなど、魅力的なものがたくさんあるんです。
だからヨーロッパは、「自分たちの手で！」という理想と、「でも最先端技術も欲しい！」という現実の間で、どうすればいいか悩んでいる、というわけなんですね。
なぜ「自分たちで管理したい」の？ データに関する心配事
「なんでそんなに自分たちで管理することにこだわるの？」って思いますよね。それには、いくつか理由があるんです。
- 外国の法律でデータが見られちゃうかも？という不安
例えば、アメリカには「CLOUD法（クラウドほう）」という法律があります。これは、簡単に言うと「アメリカの会社が管理しているデータは、たとえそれが外国（例えばヨーロッパ）に置いてあっても、アメリカ政府が必要と判断すれば見ることができるようにしなさい」という内容なんです。自分たちの大事な情報が、いつの間にか外国政府に見られてしまうかもしれない…というのは、やっぱり心配ですよね。 - 外国政府の鶴の一声でサービスが使えなくなるかも？というリスク
もし、ある日突然、外国政府の決定で、今まで当たり前に使っていた便利なクラウドサービスが「はい、今日からこの国では使えません！」なんてことになったら大変です。ビジネスが止まってしまったり、新しい技術の開発が遅れてしまったりするかもしれません。
こうした心配から、ヨーロッパでは「Gaia-X（ガイア・エックス）」という大きなプロジェクトも進んでいます。これは、ヨーロッパ独自のクラウドサービスのための基盤を作って、アメリカの会社への依存度を少しでも減らそう！という壮大な構想なんですよ。ヨーロッパみんなで協力して、安心して使えるクラウド環境を作ろうとしているんですね。
でも、アメリカのクラウドってやっぱりすごいの？
じゃあ、どうしてヨーロッパはアメリカのクラウドサービスに頼らざるを得ない状況なのでしょうか？ それはやっぱり、アメリカの巨大IT企業が提供するクラウドサービスが、ものすごく高機能で、使いやすく、そして価格競争力もあるからなんです。
彼らは、長年にわたって莫大な研究開発費と人材を投入してきました。その結果として生まれたのが、
- AI（人工知能）を使ったすごいデータ分析ツール：大量のデータをあっという間に分析して、ビジネスに役立つ新しい発見をしてくれたりします。
- サーバーレスコンピューティング：これ、ちょっと専門用語っぽいですが、開発者が「サーバー（プログラムを動かすコンピューター）の管理って面倒だな…」という悩みから解放されて、もっと新しいサービス作りに集中できるようにする、とっても効率的な仕組みのことです。
などなど、本当に革新的な技術がたくさんあります。ヨーロッパの会社が、今すぐこれらと同じレベルのサービスを、同じような価格で提供するのは、残念ながら簡単なことではないのが現状です。
じゃあ、どうすればいいの？「いいとこ取り」作戦！
板挟み状態のヨーロッパですが、何か良い解決策はないのでしょうか？ そこで注目されているのが、「ハイブリッドクラウド」や「マルチクラウド」という考え方です。
「え、また新しい言葉？」って思いました？ 大丈夫、これも分かりやすく説明しますね！
- ハイブリッドクラウド：これは、「自分たちの会社の中にあるコンピューターシステム（これをオンプレミスって言ったりします）と、外部の会社のクラウドサービスを、うまく組み合わせて使う」方法です。全部クラウドじゃなくてもいいし、全部自分たちで抱えなくてもいい、という柔軟な考え方ですね。
- マルチクラウド：これは、「一つの会社のクラウドサービスだけじゃなくて、複数の会社のクラウドサービスを組み合わせて使う」方法です。A社の得意なサービスと、B社の得意なサービスを、まさに「いいとこ取り」するイメージです！
この「いいとこ取り」作戦を使うと、例えばこんな風に賢く使い分けができます。
- 絶対に秘密にしたいヨーロッパの重要なデータや、絶対に止まってはいけない基幹システムは、信頼できるヨーロッパ現地のプロバイダーが提供するクラウドサービスや、自分たちの管理下にある安全な場所に置く。
- AIを使った高度なデータ分析や、最先端の技術を試してみたい場合は、アメリカなどの進んだ機能を持つ大規模クラウドサービスを利用する。
これなら、データの安全性をある程度確保しつつ、最新技術の恩恵も受けられそうですよね！これは単なる一時しのぎの策ではなく、ヨーロッパが自分たちのデジタル主権を守りながら、世界の技術革新の流れにも乗り遅れないようにするための、長期的な戦略と言えるかもしれません。
ただ組み合わせるだけじゃダメ！大切なのは「ちゃんとした設計図」
「なるほど、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドがいいんだね！」と、すぐにでも色々なサービスを契約したくなるかもしれませんが、ここで一つ、とても大切なポイントがあります。
それは、これらのクラウドサービスをどうやって賢く、効率的に、そして安全に組み合わせるか、という「ちゃんとした設計図（アーキテクチャ設計）」を考えることなんです。
よくある失敗例としては、目先の必要性だけであれこれとサービスを導入してしまい、気づいたらシステム同士がうまく連携できなかったり、データがあちこちに散らばって管理が大変になったりする「ごちゃ混ぜ状態」に陥ってしまうことです。これでは、せっかくのクラウドのメリットも半減ですよね。
そうならないためには、
- 今、自分たちのビジネスや組織にとって本当に必要な機能は何か？
- 将来、どんなことをクラウドで実現したいのか？長期的な目標は？
- 世界の国々の関係性（地政学的なリスク、なんて言ったりします）が、自分たちのデータ管理にどう影響しそうか？
といったことを、事前にしっかりと考えて、計画を立てる必要があります。大きな会社の汎用的なクラウドサービスから、特定の分野に特化した国内外の専門的なサービスまで、選択肢はたくさんあります。それらがスムーズに連携して、データがちゃんと必要な場所でやり取りできるようにすることが、本当に重要なんです。
しっかりとした設計図があれば、潜在的なリスクを最小限に抑えることができるだけでなく、新しいビジネスチャンスを生み出したり、組織全体の成長を加速させたりすることも可能になります。
ヨーロッパの未来はどうなる？バランス感覚がカギ
ヨーロッパが「自分たちのデジタルは自分たちのものだ！」と考えるのは、主権国家として当然の権利であり、とても合理的な目標です。しかし、その目標を達成するためには、当面の間、「自分たちでコントロールするぞ！という自律性」と、「最先端の技術もちゃんと使えるようにするぞ！という利便性」の二つの間で、非常にデリケートなバランスを取り続ける必要があります。
だからといって、「ヨーロッパのサービスしか使っちゃダメ！」と決めつけたり、「外国の会社は一切シャットアウト！」というような極端な政策をとってしまうと、かえって自由な競争がなくなり、新しい技術やサービスが生まれにくくなってしまう可能性があります。それは、ヨーロッパ自身のイノベーション（技術革新）を遅らせてしまうことにもなりかねません。
大切なのは、選択肢を狭めるのではなく、むしろ賢く広げること。そして、ヨーロッパが得意とする可能性のある分野、例えば「量子コンピューティング（今のスーパーコンピューターとは比べ物にならないくらい超高速な計算ができる、夢のような未来の技術）」や「最先端の半導体の設計・製造」といった特定の専門分野で、世界をリードできるような独自の強みを育てていくことなのかもしれません。
ヨーロッパは今、大きな課題に直面していますが、それは同時に、新しい未来を築くための大きなチャンスでもあります。バラバラに分断されるのではなく、お互いの強みを活かして協力しあえるような、より柔軟でつながりのある仕組み（アーキテクチャ）を作っていくこと。それが、これからのヨーロッパが競争力を保ち、成長していくための最も重要なカギとなるのではないでしょうか。
筆者ジョンのひとこと
いやー、クラウドの世界も、国と国との関係が絡んでくると、なかなか一筋縄ではいかない複雑な問題が出てくるんですね。でも、これは遠いヨーロッパだけの話ではなく、日本に住む私たちにとっても、実は他人事じゃないかもしれません。自分たちの大切なデータや、日々使っている便利な技術を、これからどう守り、どう賢く活用していくか…今回のヨーロッパの悩みは、そんなことを考える良いきっかけになるお話だったなと感じました。技術の進歩も、安心して使える環境も、どっちも大切にしていきたいですよね！
この記事は、以下の元記事をもとに筆者の視点でまとめたものです：
Europe is caught in a cloud dilemma