あなたのビットコイン、実は追跡されている?「ウォレット・クラスタリング」の仕組みを優しく解説!
こんにちは!ブロックチェーン技術の最新ニュースを、初心者の方にも分かりやすくお届けするブロガーのJonです。
「ビットコインって、取引が匿名だから誰が使っているかバレないんでしょ?」
こんな風に思っている方、多いかもしれませんね。確かに、ビットコインのアドレス(銀行の口座番号のようなもの)は、ただのランダムな文字列で、個人の名前や住所とは結びついていません。でも、実はその取引履歴をたどることで、「どのアドレスとどのアドレスが同じ人のものか」を推測する技術があるんです。それが今回ご紹介する「ウォレット・クラスタリング」という技術です。
今日は、この少し専門的なトピックを、誰にでも分かるように、例え話を交えながら解説していきますね!
そもそも「ウォレット・クラスタリング」って何?
まず言葉を分解してみましょう。「ウォレット」は、ビットコインを入れておくためのお財布のこと。「クラスタリング」は、「集団にする」「グループ化する」といった意味です。
つまり、ウォレット・クラスタリングとは、ブロックチェーン(取引が記録される公開台帳)上にあるたくさんのアドレスを分析して、「これとこれとこれは、たぶん同じ人が持っているお財布(ウォレット)に入っているものだろう」と推測し、グループ化する技術のことを指します。
例えるなら、名探偵がパーティー会場にいる人たちを観察しているようなものです。Aさん、Bさん、Cさんがそれぞれ別々に会場に入ってきたとしても、帰りにみんなが同じ一台の車に乗り込んで帰っていったら…?「この3人は知り合いで、一緒に来たグループなんだな」と推測できますよね。この「同じ車」にあたるのが「同じウォレット」で、「Aさん、Bさん、Cさん」がそれぞれ「別々のアドレス」というイメージです。
追跡の鍵は「UTXO」と「共通インプット」にあり
では、どうやって「同じお財布の持ち主だ」と推測するのでしょうか。ここで重要になるのが、UTXO(ユーティーエックスオー)という仕組みです。
UTXOは「Unspent Transaction Output」の略で、日本語にすると「まだ使われていない取引のアウトプット(出力)」となります。…これだと難しいですよね(笑)。
もっと簡単に、「お釣り」だと考えてみてください。
あなたが1,000円札で300円のジュースを買うと、お釣りとして700円が返ってきますよね。ビットコインの取引もこれと似ています。例えば、1BTC(ビットコインの単位)が入っているアドレスから0.3BTCを誰かに送金すると、あなたの元にはお釣りとして0.7BTCが新しいアドレス(お釣り用アドレス)に戻ってくる、というイメージです。この「お釣り」の0.7BTCがUTXOです。あなたのウォレットの中には、こうした取引で生まれた「お釣り(UTXO)」がたくさん入っている状態なのです。
さて、ここからが本題です。もしあなたが、2.5BTCの支払いをする必要があったとします。でも、あなたのウォレットには1BTCのUTXO、0.8BTCのUTXO、0.7BTCのUTXOというように、細かい「お釣り」しか入っていなかったらどうしますか?
答えは簡単で、これらのお釣りをいくつかかき集めて(1BTC + 0.8BTC + 0.7BTC = 2.5BTC)、支払いますよね。
この時、ブロックチェーン上には、「複数の異なるアドレス(それぞれのお釣りが入っていたアドレス)から、一つの取引が実行された」という記録が残ります。これを見た分析者は、「複数のアドレスを同時に動かせるということは、これらのアドレスは全部同じ人が管理しているに違いない!」と考えるわけです。これを「共通インプット所有権のヒューリスティック(経験則)」と呼び、ウォレット・クラスタリングの最も基本的な手法となっています。
- ステップ1: あなたがビットコインを送金しようとする。
- ステップ2: あなたのウォレットが、支払いのためにお釣り(UTXO)を複数のアドレスから集めてくる。
- ステップ3: それらをまとめて一つの取引として送金する。
- ステップ4: 分析者がその取引を見て、「この取引に使われたインプット(入力)のアドレスは全部、同じ所有者のものだ!」とグループ化(クラスタリング)する。
この作業を繰り返していくことで、雪だるま式に同じ所有者のアドレスがどんどん特定されていくのです。
なぜこれが重要?「チェーン分析」の世界
このウォレット・クラスタリングは、「チェーン分析(またはチェーンアナリシス)」と呼ばれる分野の基礎技術です。チェーン分析とは、その名の通りブロックチェーンの取引を分析することで、資金の流れを追跡したり、市場の動向を調査したりすることです。
この技術は、良い面と注意すべき面の両方があります。
- ポジティブな使われ方: 警察などの法執行機関が、ハッキングで盗まれた仮想通貨の行方を追ったり、マネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪捜査に活用したりします。
- 注意すべき使われ方: ユーザーのプライバシーを侵害する可能性があります。どのサービスをいつ利用したか、どれくらいの資産を持っているか、といった情報が企業や第三者に知られてしまうリスクもゼロではありません。
ビットコインは「匿名」ではなく、あくまで「仮名(ペンネームのようなもの)」と言われるのは、こうした分析技術があるからなんですね。
筆者Jonのつぶやき
僕がこの「クラスタリング」の仕組みを初めて知ったときは、純粋に「なるほど!」と感心しました。公開されている情報をパズルのように組み合わせることで、隠れた関係性を見つけ出す…なんだか探偵みたいで面白いですよね。同時に、自分のプライバシーを守るためには、技術の仕組みを正しく理解しておくことが本当に大切だなと、改めて感じさせられました。
この記事は、以下の元記事をもとに筆者の視点でまとめたものです:
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