AIで仕事が遅くなる?プログラマーの生産性が19%低下した衝撃の研究結果
こんにちは!AI技術について初心者の方にも分かりやすく解説するブログライターのJonです。
「AIを使えば、仕事がもっと速く、もっと楽になる!」…そんな話をよく耳にしますよね。特にプログラミングの世界では、コードを自動で書いてくれるAIアシスタントが大活躍していると言われています。でも、もし「AIを使うと、逆に仕事が遅くなることがある」と言われたら、あなたはどう思いますか?
今回は、そんな常識を覆すかもしれない、非常に興味深い研究結果についてご紹介します。
「速くなった」という感覚とは裏腹の現実
今回ご紹介するのは、METRという研究機関が行った調査です。この調査では、長年の経験を持つ16人のベテラン開発者に、普段から開発に携わっている巨大なソフトウェア(平均で100万行以上ものコードでできています!)で、実際の作業タスクをこなしてもらいました。
その際、開発者を2つのグループに分け、片方にはAIアシスタント(Cursor ProやClaudeといった人気のツール)を使ってもらい、もう片方には使わずに作業をしてもらいました。このような実験方法を「ランダム化比較試験」と言って、どちらのグループにどんな影響があるか、科学的に公平に比べるための実験方法です。
さて、その結果はどうだったのでしょうか?
驚くべきことに、AIツールを使った開発者たちは、使わなかった開発者に比べて作業完了までに19%も多くの時間がかかっていたのです。つまり、AIが生産性を下げる結果となってしまいました。
さらに興味深いのは、開発者自身の「感覚」とのズレです。
- 事前の予測: 調査開始前、開発者たちは「AIを使えば24%は速くなるだろう」と予測していました。
- 作業後の感想: 実際には遅くなったにもかかわらず、作業後には「AIのおかげで20%生産性が上がった気がする」と回答したのです。
研究者たちは、「人々が『AIで仕事が速くなった』と言うとき、それは勘違いかもしれません」と指摘しています。忙しく作業している感覚や、AIが何かを提案してくれる満足感が、「生産性が上がった」という錯覚を生んでいたのかもしれませんね。
なぜベテラン開発者は遅くなったのか?
では、なぜAIを使うことで逆に時間がかかってしまったのでしょうか。研究では、いくつかの理由が浮かび上がってきました。
AIの提案を鵜呑みにしない慎重さ
当然ですが、プロの仕事ではコードの品質が非常に重要です。そのため、参加した開発者の75%が「AIが生成したコードは一行残らずすべて自分で読んだ」と回答しています。AIが出してくれたからといって、そのままコピー&ペーストするわけにはいかないのです。
結局、自分で手直しが必要
さらに、56%の開発者が「AIが生成したコードをきれいにしたり、正しく動くようにするために大幅な修正を加えた」と報告しています。AIはあくまで下書きやアイデアをくれるアシスタントのようなもので、最終的な仕上げは人間のプロフェッショナルが行う必要がある、ということですね。
複雑な現場ではAIがついていけない
今回の調査で使われたのは、長年にわたって多くの人が開発してきた、非常に複雑なソフトウェアでした。このような大規模なソフトウェアには、独自のルールや複雑な依存関係(ある部分の変更が、他の部分に影響を与えること)がたくさんあります。AIは、まだそうした深い「文脈」を完全に理解するのが苦手なため、的確な提案が難しかったようです。
他の調査でも似たような傾向が
実は、こうした傾向は他の調査でも見られます。Googleが毎年発表している「DORAレポート」という、39,000人もの専門家からの回答に基づいた信頼性の高い調査があります。
その2024年版によると、AIの導入が進むごとに、ソフトウェアをユーザーに届ける速度はわずかに低下し(1.5%の低下)、システムの安定性も下がってしまう(7.2%の低下)という結果が出ています。また、回答者の39%が「AIが生成したコードをほとんど、あるいは全く信頼していない」と答えているのも見逃せません。
もちろん、「AIで生産性が55%も上がった」というような、もっと楽観的な研究結果も過去にはありました。しかし、そうした研究の多くは、今回の調査よりも単純で、小規模なタスクを対象としていたという違いがあります。現実の複雑な仕事では、話はそう簡単ではないようです。
じゃあ、AIコーディングツールはもう不要?
「なんだ、じゃあAIツールって意味ないの?」と思ってしまうかもしれませんが、結論を急ぐのはまだ早いです。実は、調査に参加した開発者の69%が、実験終了後も個人的にAIツールを使い続けていると回答しました。これは、純粋なスピード以外にも、開発者が価値を感じる何かがあることを示しています。
専門家は、AIツールを「万能の魔法の杖」としてではなく、「状況に応じて使い分ける賢い副操縦士(コ・パイロット)」として捉えるべきだと提案しています。
- AIが得意なこと: ドキュメント作成、定型的なコード(毎回同じように書く部分)の生成、簡単なテストコードの作成など。
- 人間がやるべきこと: ソフトウェアの核となる複雑なロジック、深い知識と経験が求められる部分の設計や修正など。
このように、得意な分野でAIに手伝ってもらい、人間はより創造的で重要な仕事に集中する。そんな賢い付き合い方が、これからのスタンダードになっていくのかもしれません。
私、Jonのひとことですが、この研究結果は非常に示唆に富んでいると感じました。新しい技術が登場すると、つい「人間 vs AI」という構図で考えてしまいがちですが、実際はそう単純な話ではないんですね。大切なのは、技術の限界と可能性を正しく理解し、「人間 + AI」として、どうすれば最高のパフォーマンスを発揮できるかを知恵を絞ること。今回の結果は、そのための重要なヒントを与えてくれているように思います。
この記事は、以下の元記事をもとに筆者の視点でまとめたものです:
AI coding tools can slow down seasoned developers by
19%