Pythonがもっと速くなる?話題の「フリースレッド」を初心者のために徹底解説!
こんにちは、AI技術ブロガーのJonです!
「Pythonって、もっと速くならないのかな?」と思ったことはありませんか?実は最近、Pythonの世界で、まさにその願いを叶えるかもしれない、大きな変化が起きています。それが今回ご紹介する「フリースレッド(Free-threaded)Python」です!
なんだか難しそうに聞こえるかもしれませんが、心配はいりません。この記事では、AIやプログラミングに詳しくない方でも分かるように、この新しいPythonの仕組みと、その使い方を4つのヒントに沿って、優しく解説していきます。
そもそも「フリースレッドPython」って何?
これまでのPythonには、「グローバルインタプリタロック(GIL)」という、大きなルールがありました。これを例えるなら、キッチンにシェフがたくさんいても、コンロが一つしか使えないような状態です。一度に一人のシェフ(スレッド)しか本格的な調理(CPUを使う重い処理)ができなかったため、本当の意味での「並列作業」は苦手でした。
しかし、Python 3.13から登場し、3.14で正式にサポートされた「フリースレッド」版では、このGILという制限を取り払うことができます(まだ選択式ですが)。これにより、複数のシェフが同時に、それぞれのコンロで調理できるように、複数のスレッドがCPUのパワーを最大限に活用して、本当の意味で並列に作業できるようになったのです。これはPythonの歴史の中でも、非常に大きな変化なんですよ。
それでは、このパワフルな新機能を使いこなすための4つのヒントを見ていきましょう!
ヒント1:そもそも、自分の作業は「並列処理」に向いてる?
まず最初に考えてほしいのが、「そもそも自分のやりたい作業は、並列処理で速くなるのか?」ということです。
フリースレッドは、タスクを分割して同時にこなす「分割統治」というアプローチをとります。そのため、きれいに分割できる作業、いわゆる「驚くほど並列(Embarrassingly parallel)」なタスクには最適です。
しかし、すべての作業がそうではありません。例えば、たくさんのファイルを書き出す作業を考えてみてください。複数のスレッドが同時に一つのディスクにファイルを書き込もうとすると、結局は順番待ちが発生してしまいます。これは「直列的な処理」なので、スレッドを増やしてもあまり効果がありません。
こういう場合は、「作業を分割して各スレッドに任せ、ファイルへの書き込みは専門の一つのスレッドに集約する」というアプローチが有効です。こうすれば、各スレッドは自分の作業に集中でき、書き込み作業で他のスレッドを邪魔することも、邪魔されることもなくなります。
ヒント2:できるだけ「レベルの高い」道具を使おう
Pythonでスレッドを扱うには、いくつかの方法(抽象化のレベル)があります。車の運転に例えるなら、エンジンの仕組みを細かく知らなくても、ハンドルやペダルで運転できるのと同じで、プログラミングでも便利な道具(レベルの高い抽象化)を使うのがおすすめです。
_thread
モジュール: 最も低レベルな道具です。OSレベルのスレッドを直接扱うようなもので、初心者にはかなり複雑です。threading.Thread
:_thread
よりは使いやすいですが、スレッドの開始から終了までの管理や、結果の受け取りなどを自分でやる必要があります。concurrent.futures.ThreadPoolExecutor
: 最も高レベルで、おすすめの道具です。あらかじめ決めた数のスレッドの「プール」を作っておき、そこに仕事を投げ込むだけで、あとはよしなに処理してくれます。プログラム本体の処理を止めずに、非同期で作業を進められるのが大きなメリットです。
基本的には、一番レベルの高いThreadPoolExecutor
を使うのが、最も安全で期待通りに動作しやすい方法だと覚えておきましょう。もし既にProcessPoolExecutor
という似た道具を使っている場合、インターフェースが同じなので、数行書き換えるだけで簡単にThreadPoolExecutor
に乗り換えられますよ。
ヒント3:C言語拡張機能(Cython)の「スレッドセーフ」を確認しよう
少し専門的な話になりますが、Pythonは、C言語のような他の言語で作られた高速な部品(拡張機能)を組み込んで使うことがあります。Cythonは、そのための人気ツールです。
フリースレッドPythonを使う上で一番のハードルとなりうるのが、これらのC言語拡張機能が新しい仕組みに対応しているか、つまり「スレッドセーフ」(複数のスレッドから同時にアクセスされても壊れないこと)であるか、という点です。
もしあなたがCythonを使っていて、自分のコードがスレッドセーフである自信があるなら、モジュールに以下の一行を追加するだけで、フリースレッド版でテストできます。
# cython: freethreading_compatible = True
この記述がないモジュールをフリースレッド版で使おうとすると、Pythonは安全のために自動的にGIL(あの「一つのコンロしか使えない」ルール)を復活させてしまいます。
Cythonには、コードをよりスレッドセーフにするための道具も用意されています。
- クリティカルセクション: 特定のコードブロックを実行している間、オブジェクトを一時的にロック(保護)する仕組みです。「この作業中は他の人は触らないで」という札を立てるようなイメージです。
- PyMutexロック: より強力なロック機能で、手動でロックをかけたり解除したりします。
ヒント4:スレッド間で「共有してはいけない」ものがある
最後に、とても大切な注意点です。一部のオブジェクトは、その内部に個別の状態を持っているため、複数のスレッドで共有してはいけません。共有すると、内部の状態がぐちゃぐちゃになってしまうからです。代表的な例が2つあります。
- イテレータオブジェクト: データを順番に取り出すためのオブジェクトです。例えば、本の「しおり」のようなもの。もし二人が同じしおりを使って一つの本を読もうとしたら、どこまで読んだか分からなくなってしまいますよね。それと同じで、イテレータ自体をスレッド間で共有してはいけません。(イテレータが取り出したデータ自体は、安全なら共有しても大丈夫です)
- フレームオブジェクト: プログラムの実行中の特定の瞬間の状態を記録したもので、主にデバッグ(エラー探し)の際に使われます。これも内部状態が複雑なため、スレッド間で共有すると問題が起きる可能性があります。
これらのオブジェクトは、「スレッドをまたいで受け渡ししない」と覚えておきましょう。
筆者のひとこと
このフリースレッド機能は、Pythonにとって本当に大きな一歩だと感じています。最初は少し技術的な側面もありますが、これにより、これまで以上に高速でパワフルなアプリケーションが作れるようになるでしょう。この新しい力を使って、世界中の開発者がどんな素晴らしいものを生み出していくのか、今からとても楽しみです。
この記事は、以下の元記事をもとに筆者の視点でまとめたものです:
4 tips for getting started with free-threaded Python